現在、世界では5歳未満の子どもが1日約16,000人も命を落としています。その子どもの多くが、下痢などの適切な衛生対策を行うことで予防できる病で亡くなっており、この傾向は特に、ウガンダなどのアフリカのサハラ砂漠以南に位置する開発途上国で顕著になっています。
こうした国々で、先進国であれば十分予防可能な病気に子どもたちが罹ってしまう原因のひとつに数えられるのが、「手洗い」の問題です。
日本では、帰宅時や食事の前に手を洗う行為は当たり前のものとなっていますが、ウガンダなどの開発途上国では手洗いがほとんど行われていないのです。
さらに、開発途上国の医療現場においても、この「手を洗う・手をきれいにする」という行為の習慣化がなされていないことが問題になっています。
先進国の病院では、医師や看護師が診断や治療・手術の前に手を消毒しますが、設備の乏しいウガンダなどの国では、消毒を行わずに医療行為を行うことで、患者同士や医療関係者もが感染症に罹ってしまうことが珍しくないのです。
この状況を改善するために、2010年に行動を起こしたのが、洗剤や手洗い製品、衛生用品などを数多く手掛けるサラヤ株式会社(以下「サラヤ)」です。
今回は、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献する、サラヤの2つの取り組みについてご紹介します。
手洗いの習慣を広める「100万人の手洗いプロジェクト」
2010年より、サラヤは「100万人の手洗いプロジェクト」をアフリカのウガンダで推進しており、対象となる衛生商品の売り上げ(メーカー出荷額)の1%を寄付に充てています。
現在ではその寄附によって、道が十分に整備されていない地域でも、清潔な水を使った手洗い場に人々が容易にアクセスでき、いつでも手洗いができるようになりました。
ただし、このプロジェクトで作られる手洗い場は、決して立派な設備のものではありません。
これには理由があり、万一故障した場合でも、ウガンダの人々が現地のものを使い自らの手で再設置・修理して使い続けられることを意識しているからです。
さらに、「なぜ手を洗う必要があるのか」を理解してもらわなければ手洗いが習慣化できないため、子どもをもつ母親達を中心に、石鹸による手洗いの大切さを理解してもらうための教育を展開しています。
ウガンダの人々が自ら活動を理解し、自発的に推進・発展していくための下地づくりは12年を超え(2022年時点)、当初はウガンダ国内の30県を対象に行われていた「100万人の手洗いプロジェクト」は、現在その活動を国全域に広げつつあります。
現地でアルコール消毒剤を生産する「病院で手の消毒100%プロジェクト」
「100万人の手洗いプロジェクト」から2年後の2012年から始まったのが、「病院で手の消毒100%プロジェクト」です。
サラヤの職員は、アフリカのさまざまな施設を視察する中で、現地の人々だけでなく、医療機関すらも衛生教育が不十分であるということに気がつきました。
医療スタッフが、診察や治療の際に手指の消毒を行っていないこともあるのです。もちろん、医療スタッフの多くが消毒の重要性は知っているのですが、彼らにとって外国製のアルコール消毒剤は高過ぎて手が出ないものだったのです。
そこでサラヤは現地の病院に協力を仰ぎ、手指の消毒を徹底することにより、院内感染や亡くなる人がどれだけ減るのかを実証実験を通して医療スタッフに伝えました。
さらに高価な外国産のアルコール消毒剤を買うのではなく、手に入りやすい価格で、かつ高品質な製品を国内に流通できるよう、アルコール消毒剤を原料から現地調達・現地生産するための工場建設に着手したのです。
この取り組みは、医療スタッフや患者を感染症から守るというだけでなく、現地における原材料生産者に新しい仕事と雇用を生み出しました。
このアルコール消毒剤の製造はその後、現地でビジネスとして独立し、ウガンダの人々だけで黒字化に成功しています。
「病院で手の消毒100%プロジェクト」が開始されて10年を数えた今、その活動は人々の生活の中にしっかりと根を伸ばしました。そのことがより分かるのが、消毒や手洗いを表すウガンダの新たな言葉です。ウガンダの人々は、いつしかアルコール消毒剤そのものや手を消毒する行為を「サラヤ」と呼ぶようになったのです。
衛生的で健康な社会は、文化や経済発展の礎
サラヤが創業されたのは1952年のことです。
第二次世界大戦が終わり、まだその傷跡が癒えていない日本では、赤痢が流行していました。
赤痢もまた、手洗いによって予防ができる病気です。サラヤは、誰もが等しく病から逃れられる方法はないか、と考え、殺菌剤入りの手洗い石鹸と専用容器を開発・販売、そして人々に手洗いの習慣を広めていくことを目的に、企業としてその一歩を組み出しました。
それから70年。日本では手洗いの習慣は当たり前のものとなり、世界でもひときわ衛生的な環境構築が実現できている国として認識されるようになっています。
ただし、それはまだ日本国内だけのこと。世界に目を向ければ、今も手洗いや十分な手指消毒が習慣化されていないことで起こる新たな感染の流行や病気があり、それによって命を落とす人々が数多くいるのです。
大切なのは、プロジェクトが支援を離れ、独立したものとして広がっていくこと
サラヤが「100万人の手洗いプロジェクト」と「病院で手の消毒100%プロジェクト」を実施する場所としてウガンダを選んだのにはいくつかの理由があります。
ひとつは、2006年にウガンダの内戦が終結し、政治が安定し始めていることでした。
現在ウガンダでは、戦後の復興に向けて人々が団結しており、その一環として国が衛生状態の向上を図る活動を行っているため、プロジェクトが浸透する土壌があったのです。
もうひとつは、プロジェクトが常に日本などから支援され続けるものではなく、将来的にビジネスとして現地で自立・独立してほしいという思いがあったためです。
ウガンダでは公用語が英語のため、他の発展途上国地域と比べ指導やコミュニケーションが容易であったことなども要因となりました。
かつての日本のように、戦争で傷つきつつも未来に向けて歩もうとしているウガンダ。
サラヤの活動がその一助となることで、この国も近い将来、誰もが衛生的な環境で健康に過ごし、その日を生きるだけでなく、文化や経済成長のための努力ができる国になるかもしれません。
さらにその次は、ウガンダが主体となって手洗いの習慣がない国に、支援と教育に向かう。そんな未来が来るかもしれませんね。
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