パソコンやスマートフォンの使用が日常となった現代、若い世代を中心に急激な視力低下が問題となっています。文部科学省の「2019年度 学校保健統計調査」によると、裸眼視力が0.3未満の小学生の割合は9.38%、中学生は27.07%、高校生は38.98%と、視力の低い子どもが年々増加しています(※1)。視力低下の問題は国内に収まりません。
世界には視力矯正を必要とする人が約40億人存在し、その半数以上が「近くに眼科検診を受ける施設がない」「経済的余裕がない」などの理由で視力を矯正することができていないと言われます。
これらの問題に目を向け、その中でも、貧困などを理由に視力矯正ができていない人たちにメガネを配布する活動などを実施しているのが、メガネのファストファッションブランドOWNDAYS株式会社(以下、OWNDAYS(オンデーズ))です。
今回は、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に貢献するOWNDAYSの取り組みについてご紹介いたします。
被災者・貧困世帯へメガネを届ける「EYE CAMP(アイキャンプ)」
きっかけは2011年の東日本大震災でした。
「メガネ屋の私たちに何かできることはないか」と考えたOWNDAYSは、国内・国外の社会問題に目を向けました。社会ではたくさんの人々が多様な問題を抱えて生活しており、必要な措置をとることができずに今もなお不自由な生活を送っています。
すべての人が平和と豊かさを享受できるようにOWNDAYSに出来る「持続可能な社会の実現」に向けた事業展開を行っていきたい、それが取り組みを始めたきっかけでした。
現在は主に三つのプロジェクトを実施しています。
一つ目のプロジェクトが、『震災や災害でメガネをなくしてしまった人や、発展途上国のメガネを購入できない人たちへメガネを配布する活動』です。
2011年3月の東日本大震災時は、3~4月の2ヶ月間で被災地7箇所にてメガネ配布を実施。2016年熊本地震の際も現地へ赴きメガネを失くした人々を助けました。
その後、活動は国外へ広がりました。日本は海外と比べると経済的に豊かであり、子どもたちは毎年視力測定が受けられるため、視力矯正を行う環境が整っています。しかし、海外では健康診断が当たり前でない国や医療機関へのアクセスが難しい地域、金銭的負担でメガネが買えない方など、そもそも視力矯正を行う環境が整っていません。健康診断がないために自分がしっかり見えていないことに気づかない子どもたちもいます。
これらの理由から海外の発展途上国で優先的にメガネの配布活動を実施するようになりました。
現在は各国のNGOと提携して3ヶ月に一度、現地医師(NGO団体所属)協力のもと、眼科検診を行っています。
視力検査のほか、眼病検査や目の健康状態をチェックして、その検眼データをもとに適切なメガネが作製します。最後は一人ひとりの目にあった最適な状態に加工・調整され、現地の人々へ直接届けられます。
視力検査を実施する場所は、海外出身スタッフのヒアリングをもとに現地ドクターと相談して決められ、これまでにインド、ネパール、フィリピン、台湾、ミャンマー、タイにメガネを届けてきました。
新型コロナウイルス感染症が流行してからは、これまでのようにスタッフが集まって各地を訪問することが難しくなったため、現地のドクターやチャリティーグループへ作製したメガネを託して、感染対策を徹底しながら少人数でメガネを配布しています。
OWNDAYSでは「このような辛い状況だからこそ、少しでも多くの人に笑顔になってほしい」と考え、コロナ禍においても工夫を凝らしながら『EYE CAMP(アイキャンプ)』を継続しています。
社会問題である「盲導犬の普及活動」「ひとり親支援」にも取り組む
プロジェクトの二つ目は『盲導犬』に関する取り組みです。OWNDAYSでは社会的に盲導犬の認知を広めるための普及活動を行い、盲導犬の育成を支援しています。
公益財団法人日本盲導犬協会によると、盲導犬を必要とする潜在需要3,000人に対して、盲導犬の数は909頭(2020年3月末現在)。対してイギリスの人口は日本の半分ほどですが、盲導犬ユーザーは4,000人であり、日本の盲導犬数は諸外国と比較すると低水準となっています(※2)。
その要因の一つに「盲導犬の受け入れ拒否」があげられます。盲導犬に対する正しい理解を深めること、盲導犬の数を増やしていくことは直下の課題であり、OWNDAYSでは盲導犬の背中に付けるハーネスバッグを制作したり、全国の店頭・オンラインストアにて盲導犬チャリティーピンバッジを販売して売り上げを寄付したりと、同じ「目のパートナー」である日本盲導犬協会と協力し普及活動に取り組んでいます。
三つ目は『ひとり親支援プロジェクト』です。
OWNDAYSでは、国内のひとり親世帯の子どもを対象にメガネを届ける支援活動を2020年12月より開始しました。NPO法人グッドネ―バーズ・ジャパン(以下GNJP)と提携し、GNJPが支援しているひとり親家庭へ事前にアンケートとヒアリングを行い、家庭状況と視力検査の評価に基づいて支援対象を決め、メガネを届けています。
厚生労働省が2020年7月17日に公表した「2019年国民生活基礎調査」によると、2018年度の子どもの貧困率は13.5%にものぼり、ひとり親世帯の子どもの貧困率は48.1%、約2人にひとりが相対的貧困の状態です(※3)。
本プロジェクトでは、ひとり親家庭の子どもにメガネを届けることで、国内の子どもの貧困対策および生涯学習の機会促進に目を向け、子どもの健やかな成長を支え、より豊かな未来の実現を目指しています。
「共に」見えるようになる明日を目指して
これまでに『EYE CAMP(アイキャンプ)』を通して配布されたメガネの数は、約5,300本にも上ります。2021年中には約7,000本の配布を目標としています。
また、現在実施しているプロジェクトの持続的なアプローチはもちろんのこと、環境保全に対応した新しいメガネを開発予定です。
社会では、今なお多くの人々が視力に問題を抱えながらも、必要な措置を取ることができず不自由な生活を強いられています。すべての人が平和と豊かさを享受できる持続可能な社会を実現すること。そして、昨日よりも今日、今日よりも明日、一つでも多くの「笑顔」を増やしていくことがOWNDAYSの掲げるビジョンです。
視力矯正が当たり前となった現代において、これらの支援を求める人々は今後も増加していくことでしょう。目の社会活動が更に発展していき、すべての人々が「見えるようになる」ことを期待したいです。
-
アフリカの人々を感染症から救いたい!サラヤの「100万人の手洗いプロジェクト」&「病院で手の消毒100%プロジェクト」
サラヤ株式会社126 -
廃棄布に新しい価値を。布のアップサイクル新素材「NUNOUS (ニューノス)」
セイショク株式会社202 -
もみ殻が水と空気を浄化する新素材に!ソニーが生んだ「トリポーラス」とは
ソニー株式会社231 -
生活が厳しい家庭の子ども達に笑顔を。「こども宅食」を全国へ!
一般社団法人こども宅食応援団206 -
「飢餓」と「肥満」を同時に解消! 「1食を分かち合う」TABLE FOR TWOプログラムとは
TABLE FOR TWO International360
注目記事ランキング