日本では当たり前の楽器を使った音楽教育ですが、世界には、楽器に触れる機会に恵まれない子どもたちが多く見られます。
こうした状況に対して、より多くの子どもたちに器楽演奏の機会を提供し、音楽・楽器の楽しみ方を伝えるため、新興国を中心とした社会に関わるさまざまな場所で器楽演奏体験をサポートする活動を行っているのが、国内トップ音楽メーカーのヤマハ株式会社です。
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」に貢献する、ヤマハ株式会社(以下ヤマハ)の取り組みをご紹介します。
社会に関わるさまざまな場所に楽器を楽しむ機会を提供する「スクールプロジェクト」
新興国の子どもたちの中には、学校音楽教育に器楽教育が導入されていないため、楽器に触れる機会がない、十分に学ぶことができないなど、音楽教育にさまざまな課題があります。その原因には、教育環境としての設備不足、指導者不足、指導カリキュラムのノウハウ不足など、多数の要因が隠されています。
ヤマハは、楽器に触れたことのない子どもたちに楽器演奏の楽しさを提供するため、2015年より器楽演奏体験をサポートする「スクールプロジェクト」を始めました。
ポータブルキーボード、リコーダーなどの楽器や教材、指導ノウハウをパッケージとして提供する「Music Time」プログラムを核に、子どもたちが器楽演奏を体験できる環境づくりをサポートしています。これは楽器と専用教材を使って授業を行うヤマハオリジナルのもので、講師となる指導者にはヤマハ独自の研修も行い、音楽授業や課外活動で楽器を楽しく学べるコンテンツとして提供しています。
また、器楽演奏には、感情表現の幅を広げ、他者との協調性や責任感の醸成といった教育上のメリットもあると言われていますが、子どもたちに音楽の楽しさを知ってもらえるように、その国の音楽文化を取り入れ、学習の成果を発表する場としての各種フェスティバルなども開催しています。
現在(2020年3月末)、このスクールプロジェクトはインドネシア、マレーシア、ベトナム、インド、ロシアの5カ国で展開し、1,500校、39万人の子どもたちに器楽演奏の機会を提供。各国の音楽文化や状況に合わせた学習内容を提案することで、将来的には、子どもたちが質の高い器楽演奏体験の機会に等しく恵まれることを目指しています。
インドネシア、ベトナムにおける取り組み事例
インドネシアでは、2015年に「Music Time」を開始し、2017年には全国490校でリコーダーやピアニカのプログラムが導入されました。また、同国教育文化省と協力して「アンサンブル・ビデオコンペティション」を開催して子どもたちに成果発表の場を提供するなど、インドネシアの音楽教育の発展に貢献しています。
また、もともと小中学校に器楽教育が含まれてなかったベトナムでは、学習指導要領に楽器を用いた教育が盛り込まれるよう、現地の教育訓練省と協力して取り組みを進める中で、2020年までの約3年間で、10都市245校の小学校でリコーダークラブ活動が政府公認のもと実施されました。
これらの取り組みは、ヤマハが日本で長年にわたって展開されている実績、現地のニーズにマッチしている点などが評価され、日本国内では2016年に文部科学省「日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)(※1)」の公認プロジェクトに、2018年には同応援プロジェクトに選定されました。
器楽教育が進んだ先の未来とは
ヤマハが「スクールプロジェクト」を通して目指しているのは、「世界の人々の音楽を通じた心豊かな生活と快適な社会の実現」。目標4「質の高い教育をみんなに」や、目標16「平和と公正をすべての人に」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」などに通じる取り組みです。
音楽には、人々のつながりを強め、幸福度を高める効果があり、社会秩序や包摂的な社会の形成にも繋がるということを信じて、アジアで積極的な音楽教育の支援を行っているヤマハ。
その豊富な経験と、国際的な視点、なによりも同社の音楽愛にあふれた姿勢。これらはヤマハだからできるSDGsの取り組みではないでしょうか。
※1 官民協働のオールジャパンで取り組む日本型教育の海外展開事業。
『日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)』公式サイト
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